あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
201707<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>201709
私と猫たちのこと(1980年代半ば~2012年暮)
 愛猫のミケコを拾う前、横浜の団地に住んでたころ庭にまるまるした白黒ブチの猫が来てた。
 目が悪くて目やにでうまくあかずいつも庭で寝てた。
 目が細くて狐みたいに見えるので妻は「きつね丸」って名前をつけた。
 昼寝してる「きつね丸」にごはんをあげてると通りかかった子ども達がなでに来たりした。
 「きつね丸」は私の靴に後足を一本載せて甘えるのが癖だった。

 団地の組合からクレームがきて追い出せと言われた。ペット禁止の団地だった。
 正月頃の寒い日妻が
「きつ君ごめんね、もうご飯あげられなくなっちゃったんだ」
 ってきつね丸に優しく言った。
 すると翌日から姿が見えなくなった。
 どうしたのかと捜したが見つからず暗くなって帰ろうと思い林を見ると、降りしきる雪の中「きつね丸」と目が合った。

 ほとんど開かない目で私を見ていた。
 静かに微笑んだような顔だった。
「きつ君よう・・」
 って言ったきりしばらく向かい合っていた。
 何を言っていいかもわからなかった。
 そして別れた。それきりだった。
 50年以上生きてきてあんな悲しい雪の晩は今でもない。
 貧しくて獣医にも連れて行けなかった。本当に何もしてあげられなかった。

 足が怪我で腐りかけてたミケコを拾ったとき、私は二度とあんな思いはイヤで、抱いて獣医に連れて行った。
 入院してなんとか切らずにすんだけど季節は梅雨で
「この雨の中、外に放すと足腐っちゃいますよ」
 って言われて私はミケコを飼うことにした。
 アンネの日記を決め込んだ。
 仕事も軌道に乗って妻は勝手に家を買った。

 ミケコを飼うための家だった。
 そこに越して14年、ミケコは家猫として生きて死んだ。
 もう猫は飼わないつもりだったけどしろさんが来た。
 しばらくしたらミッコルさんも来た。
 しろさんがこの夏目元の潰瘍を患ったのをやっとこの秋獣医で治した。思えば四半世紀以上も昔、「きつね丸」にしてあげたくてできなかった思いが、ほんの少しでも果たせたような気がした。

 雪の夜向かい合った「きつね丸」のことは忘れない。
 二十代のあの晩のことを50過ぎても忘れない。
 今でもごめんようって思う。猫たちにはできるだけのことをする。
 叱ることも追い立てることもしなかったのに、あの日黙って去った「きつね丸」への、それがせめてもの手向けだと思う。

 その後私があとにした団地は結局住人の多数決でペットOKの団地になった。ざまあみやがれって思った反面、間に合わなかった猫たちのことが残念だった。

(以上2012-11-07 Twitterより編集まとめ)

 追記

 しろさんを治せたと書いたけど、本当に治せたかどうかわからない。
 切除した組織の検査結果は癌だった。
 扁平上皮癌。
 しろねこはかかりやすい病気だという。
 ひどいケースでは抜糸もすまない内に再発したりするそうだ。
 しろさんが再発するのか、しないのか、わからない。一ヵ月後か半年後、何年か後かもわからない。
 十年以上生きる野良はまれだそうだから、逃げおおせるかもしれない。

 退院から半月あまり、しろさんの術後の目元に血がついていた。
 何日か続くので写真を撮って獣医さんに見せに行った。
 頬側の端っこも皮膚の下を手術で切ってあるので、そこが開いたのかもしれない、再発してるのかもしれない。
 写真だけではわからないと言われた。
 目薬の軟膏をもらって帰ったけど、しろさんはいやがるのでうまくつけられない。
 本当は大事をとって飼い猫なら眼球摘出とかするらしいけど、野良のしろさんにそれは辛い。
 結局先生とも相談の上当面は様子を見ることになった。

 しろさんは元気で食欲も旺盛、毎日飯を食いにきてくれる。
 彼と会えるのはうれしいけれど、目元を見るのは痛々しい。
 抱っことかは嫌がるので、背中をなでるくらいだけど、この前背中におでこをつけてみたら、柔らかくて暖かくて、故ミケコの毛ざわりを思い出してちょっと泣いた。

 先日の手術と一週間の入院で、わが家に余分な金はない。
 金持ちか貧乏かなど人の価値や貴賎と何の関係もないと思ってるけど
「金があったらもっとしろさんにいい治療を受けさせてあげられるのに」
 とか思うと、己の甲斐性のなさが悔やまれる。

 などと思いつつミケコの遺影を見ると
「おっ父(とう)は、いつも『自分も人もゆるす』とか言う話してるくせにあれはウソか」
 と、脳裏にミケコの声がする。

 この15日でミケコが逝って12年。
 干支が一巡りするなんて、またずいぶんな歳月だけど、彼女とは心でずっと共にいる。
 しろさんも、ミッコルさんとも、これからも。
 言うまでもなく「きつね丸」も。
 みんないっしょに生きていく。
コメント
この記事へのコメント
犬や猫を「飼う」と言うと、上から目線で嫌ですが、「共に生きて行く」と言えば命は等価値になりますね。
たとえ付かず離れずの付き合いであっても。
2012/11/20(火) 23:55:23 | URL | ぬうぼマン #x9c5GV3o[ 編集]
はい
>ぬうぼマンさま
 生物に進化の系統樹で後先はあっても、貴賎とは関係ありません。いやそれを言うなら人間にとってはこの地球の先輩です(笑
 食うために獲るとか伝染病を媒介するから駆除するとかやむをえない場合は除いて、仲良く敬意を持っていきたいです♪
2012/11/21(水) 07:00:30 | URL | 山本貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.