あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
201701<<12345678910111213141516171819202122232425262728>>201703
慣れることと慣れないこと
 先日『メタルマックス3/双銃身の魔女』の4話の絵コンテを完成させました。
 驚いたのが、完成と同時に、それまで数日間(もっとか?)私を悩ませていたひどい肩と背中の凝り、腹部や肋骨まわりの不定愁訴(東洋医学で言う「痃癖(けんぺき)」)、そして片方のまぶたに時々起こる痙攣がウソのように治まったことです。
 要するにストレスだったのでしょうが
 今回とりわけ重要な回で気合入ってたのもありますが、もう30年以上もマンガ家やってきて、たいがいのことには慣れてるつもりの自分でも、こんなに色々緊張してたんだな、と。

 慣れと言うと、惰性に流されるネガティブな意味もありますが、そうではなくて、自動車教習場に来た素人がガチガチに力が入った状態でハンドルを握って、まわりもまともに見えていないのと、ベテランのドライバーが無駄に力を入れることなく周囲にきちんと気を配って運転できる、そういう違いを言いたいのですが

 もっとも初心忘るべからず、で、原点には常に立ち戻る必要があります。

 昔ある武術家さん(達人です)が、師匠から「おまえはいつまでたっても、まっすぐ歩けないな」と言われた話を聞いたことがあります。
 身体に障碍があって直進できない方のことでは無論なく、精密な身体運用を極める武術家の視点での話ですが
 達人と言われるレベルになっても、そういう「未熟さ」が師匠の目には見て取れる。
 余人には思いもつかない世界です。
 歩くことはすべての動きの原点ですから、それがいい加減ではなんのワザもないということでしょう。
 おそらく一生の課題なのだと思います。

 達人でもなんでもない私ですが、駆け出しのころは、締め切りのたびに緊張しまくって神経性の腸炎を起こし、最後はいつも大下痢してました。19歳でデビューして、下痢しなくなったのは二十代も半ばになってからだったように思います。
 今はよほど徹夜や疲労が積もって体力低下しない限りめったにありませんが
 コンテ一本にも想像以上のプレッシャーと緊張があるのを、体が教えてくれました。

 もっとも、『メタルマックス』の場合、私の「私有財産」?なオリジナル作品と違い、宮岡氏始め制作スタッフ、制作会社、そしてファンの方々のものでもあり、あだやおろそかには描けないという思いが強く、ふだんの自分の作品にはない責任を感じています。
 それがそういう形で現れたのかもと思います。

 ベテランになると、自分の創作を悪い意味での「伝統芸能」にしてしまい、なんの疑問も試行錯誤もなく「いつものやつ」で描いてしまうケースもありますが、そうはなりたくないものです。
 いくつになっても自己の欠点は限りがなく、生涯追及はするけれど、これとこれは墓の中まで持っていくしかないなと思うところがいくつもあります。
 こんなオレはヘタレだろうか、とも思っていましたが、先日、このブログで御本をご紹介(「もう死んでもいいのですか、ありがとう」)した足立大進というお坊さんの本に

<今は立場上、日曜説教や研修会で話をしなければなりません。講演を頼まれた日が近づくと体調を崩すほど重荷に感じます。話を終わった後は、やりきれない自己嫌悪に陥ります>(『<安心>の道しるべ』足立大進・著/春秋社

 と、ありました。
 著者は臨済宗円覚寺派の管長さんだそうですが、そいうい人になってもこうなのかと思い、ちょっとほっとしたものです。
 人生、慣れることと慣れないことがあり、慣れていいことと慣れていけないことがあるのかも、と
 そんなことを思いました♪
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.