あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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思い込みの恐ろしさについて
『プロパガンダ』

 表現規制の問題にも関連することで、オススメ書籍を一つ。
 10年以上前に邦訳が出た書籍ですので、すでにお読みになった方もおいででしょうが
 A.プラトニカス/E.アロンソン=著/社会行動研究会=訳の
『プロパガンダ-広告・政治宣伝のからくりを見抜く』(誠信書房)

 前からご紹介したいと思いつつ、あまりに引用したい箇所が多すぎてまとめようがなく、そのままにしていた一冊です。
 この中に、おもしろい箇所があります。以下いささか長いかもですが、引用します(同書98ページより)。

<われわれは立派な人の言うことを、そうでない人が言うことよりも完全に、また容易に信じてしまう。(中略)その人の品性は、彼の持つ説得の手段のなかで最も効果的なものといっても過言ではないのである>

<このアリストテレスの観察が科学的研究によって実証されるまでには、ニ、三百年の歳月が必要だった(2,300年の誤植と思われます/山本=注)。研究を実証したのは、ホブランドとワイスであるが、彼らが行ったことはじつに単純である。大勢の人びとに対してある特定の見解--たとえば
 「ソ連が近いうちに原子力潜水艦を建造する」
 --を論じた情報を提示したのである(この実験は1951年に実施されたが、当時、そのような目的に原子力エネルギーを利用することは夢物語だった)。>

<ある人びとは、その論述が、非常に尊敬され、国民的に知られた原子物理学者オッペンハイマーによるものであると知らされた。別の人びとには、同じ論述が、信憑性の低い情報源--ソ連共産党の機関紙『プラウダ』--のものとされた。もちろん『プラウダ』はアメリカにおいては、その客観性と信頼性の点において評価が低かった。>

<まず実験の参加者は、この話題に関する自分の意見を質問紙に回答するように求められた。その後に、原子力潜水艦に関する前述の論述を読むように求められた。その結果、オッペンハイマーからの情報と信じた人々は、高い割合で意見を変えた。すなわち、彼らは原子力潜水艦が実現すると、より強く信じるようになったのである。>

 ここまでは、まあ予想がつきます。
 しかし興味深いのは、もう一方の被験者についての部分。

<一方、『プラウダ』からの情報とされた人のほとんどは、その情報の示す方向に意見を変化させることはなかった。>
<彼らの他にも何人かの研究者が、異なる話題を用いても、また情報の送り手を変えても、これと同じ現象の起こることを繰り返し確認してきた。>



 これは非常に興味深い、ある意味おそろしい事実だと思います。
 人は一度「くだらない」と思い込んだ意見を、変えない傾向があるということです。
 中立的な情報、科学的なデータを見せられても「そもそも、あんな連中の言うことだから(信じられない)」
 逆に「あんなすばらしい人の言うことだから間違いなはずがない」にもなるわけですが。
 なぜ時々人があれほど一度囚われた偏見にしがみつき、頑迷固陋であるのか?ということの、一つの答えがここにあるように思います。 
コメント
この記事へのコメント
こういう結果に何時も思うさらなる不思議
私は、この調査にもう一つの質問を加えたいと思います。

「問いへの解答ありがとうございました。貴方が、原子物理学者オッペンハイマー氏についてどの程度ご存じかお教えください。同様にプラウダについてもお教えください。」

実際私たちが得る情報の多くは、自身が知りえる正確な範囲を超えてしまってます。名前を聞いたことがあるというだけで信頼度は大きく向上します。

この事は、中立であろうとすることが、とても労力を必要とすることだという現実に至ります。中立であろうとすると、数多くの情報源に接しそれを吟味して自ら判断を下さなければならない。

そんな労力を払う余裕もないなら信じるしかないといことになると思います。情報源が間違いでなければそれが最も効率が良いことです。その裏にリスクが隠れていますが、大概、気にしないのが実際でしょう。

全てを疑っては生活すらなりたたない。かといって、流れてくる情報をうのみにしていては落とし穴にはまる。その取捨には個々の嗅覚や職人技が求められています。

そして、時にかつて正確だった情報源からの情報も信頼性を時に確認することが必要です。多くの人が少しづつそういう社会的な篩を分担して持っていることが大切なんだと思います。

ではではv-100
2010/03/27(土) 12:28:10 | URL | やすやす #-[ 編集]
自己診断は定期的に、ですね;
>やすやすさま
 おっしゃるとおりで、すべてを疑っていては生活もできず、すべてをうのみにしていれば詐欺とプロパガンダのえじきとなります。
 私はなるたけ「鵜呑みにせず、否定せず」で、「保留」にしておいて検証していくことを心がけております。
 無論「直感」も使いますが、それはあくまで個人的な判断なので、他人にその判断を押し付けないようにしています。
2010/03/27(土) 18:07:00 | URL | 山本貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
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