あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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カリール・ジブラン
2007年3月5日の私のココログ日記より転載


 ご存知の方もおいででしょうが(あんまりいらっしゃらないとは思いますが)
 19世紀生まれのレバノンの詩人で哲学者で画家のカリール・ジブランって人がいます(ハリールって訳されてる場合もあったような)。
 この人の代表作の散文詩『預言者』(佐久間彪・訳/至光社)。
 
 「アルムスタファ、選ばれ、愛され、時代の曙であったアルムスタファ。かれは迎えの船を、12年のあいだオルファーズの町で待ち続けていた。かれを故郷(ふるさと)の島へ連れ帰るはずの船を。」

 この出だしでもう私は引き込まれてしまいました。
 そしてついに来た迎えの船を前に、
 別れを惜しむ町の人々に請われて、アルムスタファが彼ら彼女らの尋ねに答える形で全編は進みます。
 手のひらにのるサイズの薄い文庫で、あっと言う間に読み終えましたが、ひとつひとつが宝石のような文であふれていて、胸に染みました。

 映画『コンタクト』で、はるか星々の彼方を覗いたヒロインが「詩人を連れてくればよかった」という意味のことを言うシーンがありますが
 まさに詩人。

 私も、表現者の一人として常々思うことですが
 誰かの言葉がほかの誰かに届くとき
 それは詩(うた)となって届くものだと。
 どれほど理路整然としていようと、立派な内容があろうと、魂に響かないメッセージは虚しい。
 響きあう歌、響きあう詩
 それがつむぎ出せてこその表現者。それを摸索してこその表現者ではないかと。

 『預言者』は全編形而上的なニュアンスを含んだ対話ですし、神といった単語もでてきます。
 作者カリールの出生地(レバノン)から、人は反射的にイスラ○教を連想するかもしれませんが、私の限られた知識で言うと、ここで語られている内容は、その教義からは離れているように思います。
 そもそもジブランはキリスト教の家庭の生まれだそうで、日本での紹介もそっちの系統の方々や出版社からなされているようです(ちなみに巻頭に一文を寄せておられるのは曽野綾子氏)。
 しかし、同書の内容はキリス○教でも何教でもない。特定の宗教や特定の神の話ではない、もっとグローバルなスピリチュアリティに貫かれているように思います(ちなみにジブランはニーチェに心酔していたそうで)(笑)。

 それは同書の最後の一文でも明らかなのですが、それは伏せます。
 
 とても一言では語りつくせるような内容ではありません。
 少しだけ引用して終わりにします。
 


 アルムスタファは答えた。
「オルファレーズのひとびとよ。何を私が語れましょう。あなたがたの魂のなかに、今、動いている其のことの他には。」

「すると、町の長老(おさ)のひとりが言った。お話しください。善と悪について。
 アルムスタファは答えた。
 私が語れるのは、あなたのなかにある「善」についてであって、悪についてではありません。
 なぜなら、悪とは飢えや渇きに苦しんでいる善そのもの。それ以外の何でしょう。」

 「あなたが持つ憧れ、”大いなる我”への憧憬、そこにあなたの「善さ」があります。この憧れはあなたがた皆のそれぞれのうちにあるのです。
 しかしその憧れは、或る人にとっては、ほとばしって海に流れこむ渓流。それは丘の秘密と森の歌を運んで行く。
 或る人にとっては平らな川。曲がり角で身をすりへらし、うねりながら流れ、海辺に着くのに暇取ります。
 しかし憧れの激しい者が、そうでない者に向かって、「なぜ君は遅いのか、なぜ立ち止まるのか」などと言わぬように。
 なぜなら、ほんとうに善い者は裸の者にたずねはしません。「君の着物はどこか」などと。家なき者にもたずねはしないのです。「君の家はどうなったのか」などと。」 


追記
 ジブランが英語でこの『預言者』(The Prophet)を発表したのは40歳の時ですが、その草稿をアラビア語で書いたのはわずか15歳の時でした。おそるべし・・・
コメント
この記事へのコメント
はじめまして~、トシです♪

グーグルのブログ検索から
訪問させていただきました♪

見やすくてきれいなサイトですね♪

また訪問させていただきま~す♪
2007/03/13(火) 13:26:42 | URL | トシ★在宅時間自由人♪ #-[ 編集]
ようこそおいでくださいました
トシさま、ありがとうございます。始めたばかりでろくに記事もありませんが、おいおい増やして行きます。またおいでくださいませ~~♪
2007/03/13(火) 19:50:53 | URL | 貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
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