あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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夢について/青い鳥≒探し物は今ここに
 有名な『青い鳥』の物語を、たいていの方はご存知だと思います。
 しかし、きちんと全文を読んで、ぞのディテールを記憶していらっしゃる方は、おそらく多くないと思います。
 私も、あまりに幼い頃、ダイジェストで目にしただけのようで、ほとんど忘れ去っています。
 ただ、有名なオチの部分。
 捜し求めていた「青い鳥」はどこでもない自分の所にあった、というのは、記憶しています。

 大変象徴的な話ですが、人生の大きなテーマはこれに要約されているように思います。
 チリから生まれチリに還る、空(くう)より出でて空(くう)に還る
 その途中、私たちはチリでないもの、空(空)でないもの(色)に一時的になりますが
 いずれもといたところに還っていきます。

 もっと小さなテーマでも、これと相似なものがあるように思います。

 実は『青い鳥』以前から、同様の物語は世界の各所に見受けられ、それが同一起源のものなのか、平行進化の産物なのかは私にはわかりません。
 たとえば、ユダヤ教ハシド派にこんな物語があるそうです。

<エイジークは、赤貧で困窮している敬虔なユダヤ教徒である。彼は助けを求めて心から神に祈るのだが、はっきりした何の応えも返ってこない。それから彼は、彼のいる小さな町から離れた大きな大都市で彼を待ち受けている燦然と輝く財宝があるという夢をくり返し見始める。初めのうち、彼はこの夢をナンセンスだとみなし、自分は狂乱しているにちがいないと推断する。しかし夢は鮮明に繰り返され続ける。財宝はある特定の橋の下に隠されているのだ>

<イェーケルの息子エイジークは、この不可解な妄想から自分を自由にするために、とうとうその都市へ旅することに決める。多くの苦難の後にたどり着くと、彼は自分の夢と完全に一致していることを発見する。まさに財宝が発掘されるはずの橋の下に、驚きあきれて立ちつくしているうちに、彼は橋の番をしている兵士たちに捕まってしまう>

<やけになってエイジークが護衛隊長に自分の夢を物語ると、この農民の信じやすさをおもしろがり、二度と再び夢を信じてはならないと諭して、彼を釈放する。一例として、隊長は彼自身のばかげた体験---財宝は、都市から離れた小さな町に住んでいるイェーケルの息子エイジークとかいう男のストーブの下で見つかるはずだという、彼が繰り返し見る夢---を引き合いに出す>

<呆然としてエイジークは家に帰り、彼自身のストーブの下に黄金を見つける>

    『カミング・ホーム-文化横断的<悟り>論』
    レックス・ヒクソン・著/高瀬千尋・訳/高瀬千図・監訳/コスモス・ライブラリーより

 自分が捜し求める宝、夢の結論を求めて、遠く旅した主人公が、結局振り出しに戻ってそのゴールを見出すというこの物語は、ある意味元祖『青い鳥』と言ってもいいかもしれません。
 同様の物語が日本の地方の民話にもあると何かの本で読んだ覚えがあるのですが、どこかへやってしまって今確認がとれません。ご存知の方がいらっしゃいましたら、お教えいただけますと幸いです。
 蛇足ですが、有名なパウロ・コエーリョの小説にも、このハシド派の物語そのままと言っていいエピソードがあったように思います。ネタバレなのでどの作品化は伏せておきます。
 それはけしてパクリではなく、たとえば私が日本の有名な昔話(『桃太郎』とか)からエピソードを自作に挿入したようなものではないでしょうか。
 ユダヤ教ハシド派などと言われても我々日本人にはちんぷんかんぷんですが、あちらでは全然違う認知度なのだと思います。あるいはもっと別に、同様のバリエーションがあるのかも知れません。

<この聖なる財宝の循環(円環)的な探求には、その真剣さや苦悶さえも>
<帰郷した者の照明を受けた見地からは、強烈なユーモアがある>
 と著者ヒクソンは書いています。
 世界の各地に、こうした物語が見られるのは
 ただ単に、人間の素朴な願望を表している、だけではなく、人生の奥底にある真実も表しているように私は思います♪

追記
 追記
 さっそくお客様から、以下のリンクを教えていただきました。
 コメント欄を開けば読めますが、飛ばされる方も多いかと思い、一応本分に追記しておきます。
 飛騨高山の民話「味噌買い橋」
 これはロンドン橋の翻案なんだそうです。興味深いですね。
 おそらく私の読んだものもこれではないかと。
 となると少なくとも日本製は「平行進化」ではなく「外来生物」ならぬ「外来説話」ということになりそうですね。
「飛騨高山むかし話」
 貴重な情報ありがとうございました。
コメント
この記事へのコメント
 はじめまして。
いつも大変面白く読ませて頂いております。
今回のユダヤのお話ですが、読みながら、
昔、まんが日本昔話で見た
「みそかい橋」というお話みたいだなと思いました。細かい筋など忘れていましたので、ちょっと検索してみたのですが、

ttp://hida.asanoya.jp/hanashi/

こちらを読んで、ちょっとびっくり。
民話って面白いなぁと思いました。
2009/09/24(木) 02:14:00 | URL | nubatama #-[ 編集]
これはこれは!
>nubatamaさま
 はじめまして。
 なんとこれは興味深い!
 となると日本の民話は完全にヨーロッパの(ロンドン橋の?)物語の翻案なのですね(少なくともこの「味噌買い橋」の話は)。
 貴重な情報ありがとうございます!♪
 平行進化なのか、外来生物ならぬ外来説話なのか、きちんと見極めていかないといけませんから♪
2009/09/24(木) 02:28:56 | URL | 山本貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
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