あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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夢について・3<若い人には若い人の夢を>
 執筆に忙殺されて遅れてしまいました。
 いや、今でも忙殺されてるんですが(笑
 先日の日記「夢について(お客様の質問にお答えして)その2」の続きです。

 今更言うのもなんですが
 50代の道を歩んでいる私と、これから人生に乗り出して行かれる20代の方とでは
 やはり別の姿勢があるのではと思うものです。
 
 武術の世界でも
 「大きく始めて小さくまとめる」
 というのがあります。
 いきなり初心者が、最小限の動きで最大限の威力を発揮するような達人の技を再現しようとしても、うまくいきません。修練は、最初は、大きく動いて基本動作を身にしみこませるための反復練習を行い、そこがクリアできてから段々ムダをそぎ落とし、コンパクトな動きに移っていきます。
 これを生き方に置き換えて言うと、私の場合は別に達人じゃないんで、「年寄りの技」と言うべきかもですが(笑
 
 夢を追うというのも、そうではないでしょうか。

 最初はムリと思えるものや、一種の誇大妄想と思えるような(だから、あまり大きな声では言えない、人に言うと笑われそうなものも含む)でもいいから、その夢を抱いて歩き出すのがいいと思います。
 ハンドルを右に左に切りすぎて壁にぶつかりながら、まっすぐ進む方法を覚えます。
 ちなみに、自動二輪、すなわちバイクの教習所で教わるものの一つに(免許をお取りになった方は覚えておいででしょうが)「一本橋」というのがあります。
 地面から数センチ高くなったタイヤ一本分くらいの幅のコンクリートの筋の上を数メートル、脱輪しないでゆるゆると進むというものですが
 あれをクリアするコツは、足元を見ないでゴールの先の一点を見すえて進んでいくことです。

 蛇足ですが、昔ある若いバイクレーサーのインタビューで、自分は走る際足元を見ないで遠くを見るということをレーサーになってからもしばらく知らずに走っていた、というのを目にしたことがあります。ある種の天才と言うか、セオリーを無視した我流の走りで、レーサーになった上いくつかレースもこなしてしまうというのが、すごい話で、人間の多様性を示しているようで感動しました。
 しかし、その選手、一本橋はどうクリアしたのか、したけど忘れてしまったのか(笑
 もうずいぶん昔のことでお名前も忘れ、藪(やぶ)の中です♪

 話は戻って
 夢というのは、あの「一本橋」を通過する際の、ゴールの向こうの一点のような効果を及ぼす場合があると思います。
 これはけして足元をおろそかにして現実を見るなというのではなく、足元ばかり見過ぎて不安と緊張に囚われないための秘訣くらいに取ればいいかと思います。

 昨今の失業率の増加、就職難、
 将来に夢が持てないという若者(に限らず中年、老年もでしょうか)の話を聞くにつけ
 確かにその状態で(見据えるべきゴールの先が見出せないまま)歩き出せというのは、けっこうしんどいことだろうなあと思うものです。
 詳しいことは別の回にゆずりますが、私の場合はもはやそういう「行く先に置いた夢」というものを必要としない心境にいるのですが(虚無主義ではありません。まあ、ある種の「自灯明(じとうみょう)」だと思ってください。「自灯明」とはなんだと言われる方は検索かけていただければ、と思います。その話はまた長くなるので別の回にゆずります)(笑)、それは今この歳、昔で言うなら(人間五十年)「老境と」言ってもいい歳になっての在り方であって、二十代の始めにそれで行けと言われたら、おそらく途方に暮れただろうと思います(できる方はできるでしょうし、そういう方はおやりになればいいです)。

 ただ老婆心(男なので「老爺心」でしょうか)から申し上げると、
 あまり遠くにかかげた夢の危険性は
 それに向かって近づいているのかいないのか、わからなくなる場合があることです。
 たとえて言うなら、北極星を目標に歩いている人は、それに遠ざかろうと近づこうと、あまりに遠い目標は大きくも小さくもなりません。変わらず天に輝いています。
 そのことに安心して、気がついたら同じところをぐるぐる回っていただけだったり、うっかり反対方向に進んでいたということさえあります。
 なんだか、先の一点を見据えることと矛盾するようですが
 どんなことにも危険な側面、トラップがあるもので
 遠くの夢は一つ持ちながら
 日々具体的にクリアしていくべきカリキュラム、プロセス(武術や武道で言うなら、昇級試験や昇段試験、あるいは、そこまで行く日々の進歩のチェックポイントでしょうか)を持つことが大切だと思います。

 そもそも今回「夢について」などというテーマで私が語るきっかけになった、若い方からのメールには、自分が実現したい夢と世界に対して働きかけていきたい夢が書かれていました。
「夢について(お客様の質問にお答えして)その1」参照)

 マンガ家になりたいという夢。
 そして世界をよくしたいという夢。
 私も同じような夢を持っていました。どちらもステキな夢だと思います。

 マンガ家になるのは、才能さえあればそんなに難しいことではないと思います。
 「嚢中の錐(のうちゅうのキリ)」
 という言葉がありますが、キリのような鋭いものは、袋の中(嚢中/のうちゅう)にあっても、自然にその鋭い切っ先を袋から突き出すことになる(才能のある者はいずれ知られることになる)という意味です。
 そういうものだと思います。
 大変なのはデビューしてからであり、それは何度も言ってきたとおりです。
 マンガ家であり続ける大変さにくらべれば、なることなどは通過点に過ぎません。

 蛇足ですが、私はよく親族の集まり(法事やお食事会など)で妻や義母から代理のスピーチを頼まれることがあります。私自身の実家は遠い山口県で、集まりと言っても大半が関東地方在住のつまの実家筋のそれなのですが、つまや義母はそういう人前でしゃべるというのは大の苦手で、私にお鉢が回ってくるのです。
 んで
 いつも快く受けさせていただいております♪
 内容が「ウケる」時もあれば、すべるときもあり、けして勝率?は高くはないんですけど(不特定多数の年長者に向かってウケを取るのは難しいです);

 私も本来は上がり症で、若い頃はサイン会の直前にプレッシャーで神経性の大下痢を起こしたりしてました。
 しかし、身内の会合でのスピーチのプレッシャーなど、仕事のプレッシャー(締め切りに間に合うかどうかとか、読者に受けるか受けないか、連載か打ち切りかetc・・・)に比べれば本当に本当に屁(笑)
 無にも等しいストレスです。
 おそらくそれに比べれば、人生のほとんどのストレスはなにほどのこともないでしょう。

 というわけで、マンガ家であり続けるというのは、苦労が多いです。

 しまった、また話がずれた!

 そうそう、夢の話です。
 お尋ねくださった方の、マンガ家になるという夢と、
 世界を少しでもよくしたいという夢。
 どちらもステキなものだと思います。
 後者はともすると誇大妄想とか偽善者とか笑われる場合もありますが
 つきつめると世界と自分は切り離せないものであり、どちらか一方のみの幸せというのは無意味なものだと思います。だからけしてちぐはぐな夢ではありません。
 自分だけの幸せというのは貧しい夢です。
 自他共に幸せになる道を模索するのが、結局は自分も幸せになる道だと思います。
 ただ、それにはそれで落とし穴があるんですが、それはまた項を改めて書きます。
 年寄りはつい先回りして余計な心配と忠告をし過ぎるのが悪い癖です(往々にして好意のつもりだったりするんですが)(汗)。
 若い方のせっかくの夢に、水を差すのはやめましょう。

 「もっと世界をよくしたい
もっと世界に夢を愛を溢れさせたい」
 という質問者の方の想い、私も大いに共感します。
 がんばってください。
 天を仰ぎ、地を省みて。

 最後にまた、おなじみマハラジおじさんの言葉から一言。

<もしあなたの欲望が個人的なもので、あなた自身の享楽のためならば、エネルギーは必然的に限りあるものとなる。それはあなたがもっている以上にはならないだろう>
<あなたが社会のためを思って望むならば、世界全体があなたとともに望むだろう。人類の望みをあなた自身のものとして努めなさい。そうすれば、けっして失敗はありえない>
                         ----------ニサルガダッタ・マハラジ 
コメント
この記事へのコメント
途方もない夢
若者なら、漫画家が描ける宇宙旅行士になって、月面にコボちゃんみたいな漫画を描く。ぐらいの法螺を吹いてもいいと思う。

面白いことを考えるだけなら、タダだし。

いくらでも面白いことを考えられるのならプロになれるかもしれませんね。

私は漫画家を目指したことはないですが、思いついたのでコメントしました。
2009/09/04(金) 01:10:40 | URL | まえやま #-[ 編集]
訂正
宇宙旅行士なんてないですね。

宇宙飛行士でした失礼。
2009/09/04(金) 05:37:08 | URL | まえやま #-[ 編集]
間違いの訂正
宇宙旅行士なんてないですね。

宇宙飛行士でした。失礼しました。
2009/09/04(金) 05:38:15 | URL | まえやま #-[ 編集]
どうせ見るならでっかい夢を♪
>まえやまさま
 ほんと、若いうちからちまちままとめることはないですよね。
 そのうち人生が教えてくれますから
 だんだん軌道修正していけばいいかと思います♪
2009/09/04(金) 18:15:04 | URL | 山本貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
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