あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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好きなことと生業
自分の好きなことを生業にすることについて知り合いがブログで取り上げておいででしたので私も


 私のサイトのお客様に、某省庁のお役人だったのを辞めて、出張整体師に商売換えなさった方がいらっしゃいます。
 まっとうなことを言うと握りつぶされたりする官僚社会に嫌気がさしたってのも理由の一つだったようですが、元々子どもの頃から武術の心得がおありで、治す方も資格をお持ちだったのでそういう仕事に転職なさった。
 あまりに安定から不安定への転進なので
 「不安じゃありませんでした?」
 とお尋ねしたんですが
 「死ぬ時、あれもしておけばよかった、とかあれをしないで死ぬのは心残りだ、とか思うより、こんなことして死んじゃったよオレ、という方が自分は好きで」
 とおっしゃってたのが印象的でした。

 私も漫画家なんて仕事を選んだ時点で安定や保証などとは無縁の世界に自己責任で入った者です。

 私の場合、人気=お金 なわけですが
 これは、自分がどれくらい世の中のお役に立っているかのバロメーターとして、己を振り返る指針にしています。
 なかなかお役に立てませんね。反省(爆

 元々あまり物欲金欲はないもので、もしぎりぎり遊んで暮らせる遺産かなんかがあって、好きな作品だけ描いていられたら(ああ、何度あこがれたことか!)、私はたぶん、自分を振り返り反省することなく、今よりもずっと進歩のない自己中な作品を描いて満足していたことでしょう。人間的な成長もなかったことでしょう(当者比)。

 読者の心を掴むにはどうすればいいか?を執筆を通して考え学ぶことで、人の心の機微を知り、自分の狭い了見を叩き直すことができたと思います(まだ日本国の借金並みに叩き直さなくちゃいけないとこだらけです)。

 人はどこか特別な場所や時間ではなく、今あるこの場所と環境を利用して学び成長すればよいので(特別な修行をするのも、それはそれで素晴らしいことですが、それは限られた人で、一般人は日々の暮らしを通してすればいい)
 私は謹んで今のこの在り様を利用させていただいています。

 心理学的に見ても、日々の不平、ストレスは降り積もる雪のように自己の内部に積もっていき、いずれ精神も肉体もそのネガティブな影響を受けます。
 不平不満ではちきれそうになった人間は、自分も回りも不幸にします。
 自分を愛せない人は他人も愛せない。
 日々の暮らしを愛せない人が、どうして人生を、世界を愛せましょう。

 じゃあどうするかと言うと、すべての中に活かすべき要素を見て利用する。宗教者なら、すべての中に神を見ると言うでしょう。
 武術家が、右から殴られようと左から蹴られようと、すべて相手を倒すきっかけに、降りかかる火の粉を利用活用してしまう、あれです。
 よくぞ殴ってくださいました、うへへへへ、みたいな(たぶん道場でそういう修行をなさってる方は、よくおわかりだと思います)(笑)。

 それを突き詰めていくと、目先の運不運、幸不幸に囚われず、万事が吉事に思えていく(凶事も吉事に転換していく)ようです。

 そういう方向を摸索するのに、好きなことを仕事にした時点で、少しだけ下駄を履いてる部分はありますね(笑
 でもそれは、あくまで少し多目の元手のようなもので、どう全てを利用してブレイクスルー、マドルスルーを見出すかの試行錯誤は、どんな仕事でも大変です。

 先日、ある仏教の本を読んでいたら、瞑想するのに、自分が幼かったころ楽しかったこと、今と違って一日が長く、悩みも煩悩もなかった時代の感覚を思い起こすのも(初心者には)一つの方法、とあって、思わず膝を打ったんですが

 この仕事してると、あの頃無心にお絵かきをしていた楽しさと記憶の奥底で繋がっているんですよね。
 これは、本当に好きなことを商売にした人でないとわからない感覚でしょう。
 これまで、「好きなことを商売にできていいですね」などと言われると、そんな気楽なもんじゃないやいって思ってましたが、少なくともこの一点は、恵まれていると思いました。

 不平や呪いでいっぱいの労働よりも、喜びと感謝の中で行われた労働の方が素晴らしいと思います。それは過程も結果もです。
 その根底に、「好き」があるというのは、とっても素敵なことだと思います。
 どんな道を選んでも、なんらかの犠牲はつきものですし、
 私は好きな道がいいですね♪
コメント
この記事へのコメント
好きな本を読める幸せ
くまくまでございます。「不夜城」拝読させて頂きました。「紅壁虎」が光ならば「不夜城」は闇のフィクションと表現すればよろしいのでしょうか?ひさびさに「重い」漫画を読みました。どちらにしても同時に両方を読める幸せと思っています。いまの時代に生まれ貧しい時代~高度成長期~バブル期~現在と何を生業として生きていても面白い時代に生まれた幸せを感じています。まあ、苦悩、苦痛、色々とありましたが、突き詰めればそういう事と納得いたしております。何よりも「山本貴嗣」という方の作品が楽しめるのが良いですね~(褒め過ぎか?笑)
2007/04/07(土) 19:26:02 | URL | くまくま #eI0qnTzk[ 編集]
ありがとうございます
>くまくまさま
 『不夜城』お読みくださり、過分なお言葉ありがとうございます。
 至らぬ点もありますが、私の生涯のベスト10には入る作品かもしれません;
 思いを込めて描きました。出会えてうれしかった原作でした。
 でもできることなら、生ある限りもっと素晴らしい作品を描いていきたいですね。
2007/04/08(日) 07:56:09 | URL | 貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
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