あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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『寄港地のない船』
『寄港地のない船』

『寄港地のない船』(竹書房文庫)
 英国SF界を代表する巨匠、ブライアン・オールディスが1958年に書いた長編小説です(私が生まれる前の年です!)。
 訳者わが友人の中村融氏。
 発売は今年の7月で、何日も前に読んで、紹介したかったのですが、忙しさに流されて遅れてしまいました。

 オールディスと言っても今の若い人には「?」でしょうが、近年では映画『A.I.』の原作者と言えば少しは通じるでしょうか(それでも、もう十数年昔ですが)。
 ネタバレを言うと、これはいわゆる「世代宇宙船」を舞台にした作品です(同書の裏表紙にも書かれているのでいいでしょう、以下はそのあらすじ紹介文です)。

「その船はどこから来て、どこへ向かうのか、もはや知る者は誰もいない。巨大な宇宙船の内部で、いまや人間たちは原始的な生活を営んでいた。かつて船を支配していたという巨人族、猛烈な勢いで繁茂する植物、奇怪な生物たち、そして<前部人>と呼ばれる未知の部族を恐れながら・・・・。世界が宇宙船であることも、わずかに伝承に残っているのみだった。ある時、狩人のロイは司祭マラッパーから、この船を支配するために世界の<前部>へ向おうと誘われる。だが、仲間たちと<死道>へ旅立ったロイを待っていたのは、思いもよらない出来事の連続だった。そして、彼が旅路の果てに見たものは------。幻の傑作SF,待望の邦訳。」

 同書あとがきより少し引用します。
「世代宇宙船とは、光速を超えられない宇宙船で何十光年、何百光年にもおよぶ恒星間宇宙を渡るために考え出されたアイデアで、『自給自足式の巨大宇宙船を建造し、乗組員は世代を重ねて旅を続ける』というものだ。先例はいくつかあるが、この概念が一躍広まったのは、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインが、1941年に中篇『常識』を発表したときだった」

  以来、世代宇宙船は、これまでも多くのSF(小説、漫画、映画を問わず)で扱われており、何かで見た記憶がおありの方もおいでと存じます。これはその古典に属する作品で、私は未読でした。
 何しろ半世紀も昔の小説なので、正直今更読んでも・・・という思いも少しありました。
 まず、私は徐々に謎が明らかになるタイプの作品がじれったくてつきあいきれない人間で(笑)「いいからさっさと答えを見せろよ!」て思っちゃうんですが(だから、たとえば一作目の映画『エイリアン』みたいな、少しずつ少しずつ盛り上げていくタイプの話は一度見ると十分だったりするんですが)、本作も出だしはやはりじれったくて、早くネタがばらされないかとじりじりしてたのは否めません。
 半世紀近くの年月に色々な人が手を染めたテーマで、今更目新しい展開もないんじゃないか、
 そんな不遜な思いもあったのですが、予想に反して後半~クライマックスの展開は、すごかったです(具体的に言えないので、こんなあいまいな表現になってすみません)。
 しかも非常に視覚的。
 最後の場面は、現代のCG技術を導入して再現したら、見事なスペクタクルになると思いました。
「SFは絵だねえ」
 とは故・野田昌宏氏の名言ですが、まさにそれ。
 作者のオールディスには、その映像が脳裏にまざまざと浮かんでいたのかもと思います。
 久々に骨太な一作を堪能しました。

 少し蛇足を申しますと、近年、このテーマで映像化された作品に映画『パンドラム』があります。
 ヴィジュアル面ではかなり頑張っていますが、スケールではこの『寄港地のない船』よりはコンパクトです(限られた時間の映画と言う制限上、仕方ないかもですが)。私はその中に出てくる女戦士(女科学者なんですが、まあ戦士と言っていいかと)ナディアを演じるアンチュ・トラウェが気に入ってDVDを買いました♪
 SFとは名ばかりのホラーとかパニックものとかが多い昨今、片隅に本来のSFマインドを残した珍しい一作でした(とか言って購入動機は女優さんですけど)(笑)。




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